
憧れを履く – シャドウシューズが紡ぐ時間
憧れを履く──シャドウシューズが紡ぐ時間

「高校のとき、センタージップの靴を見かけたんです」
そう話してくださったのは、今回シャドウシューズを試着された方です。
その靴がどこのものだったのか、革靴だったのかスニーカーだったのかも、もう定かではないそうです。
ただ、真ん中に走るジップのラインだけは、なぜかずっと記憶に残っていたと。
何度かお店に足を運んだものの、当時はお金もなく、結局手にすることはなかったそうです。
それでも、その形は、ふと思い出すことがあったとおっしゃっていました。
そして今回、その「いつか履きたかった靴」を、ご自身の足に合わせて仕立てる機会が訪れました。
試し履きのあとに、ぽつりと
「夢が叶った気がします」
そうおっしゃったのが印象的でした。
言葉はそれだけでしたが、そのときの空気が、すべてを語っていたように思います。
NIHILの靴づくりには、いつも“説明しきれない何か”があります。
図面も数値も使いますが、最後は「感覚」でしか合わせられない部分があると感じています。
フィット感もそうです。
履いたときに感じる“自分が整うような感覚”も、そうです。
つくる側も、履く側も、言葉にしすぎてしまうと、その本質が薄れてしまうように思います。
ですので、こちらから語りすぎないようにしています。
感じたことを、その人自身の言葉で語っていただけるほうが、何倍も伝わるからです。
靴は、ただの道具ではありません。
「ずっと心に残っていた何か」が、かたちになることもあります。
そんな一足をお届けできた日は、
少し報われたような気持ちになります。
──今回の靴、仕上がりもよかったと思います。
でもそれ以上に、そこに流れていた空気がよかったです。
それだけで、十分です。
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